落語 そばの殿様のあらすじ 以外に歴史が浅いそば切りについて
そばの殿様
親戚の屋敷に招かれた時にそば職人がそば打ちをするのを見て、自分もやってみたくて仕方がない殿様。
城へ帰り広間に家臣達を集めると
殿様:
「皆の者そばは好きか?」
家臣:
「家臣一同皆好物でございます」
殿様は満足げにそれを確認すると、さっそく自らそばを打って振る舞うという
好きだと言ってしまった手前 断ることの出来ない家臣たち
そば粉を用意させコネ始める殿様だったが、もちろん料理などしたことのない人が見よう見まねで出来るほどそばは簡単ではない。そば粉にいい加減な量の水を入れ…
殿様:
「これでは水が少ない固すぎる。水を足せ。今度はそば粉が少ない柔らかすぎる。粉を足せ」
殿様の表情は真剣そのもの、力が入り額から滴る汗はポタポタとそばの中へ 粉が鼻に入ったのか手鼻をした手を洗おうともせずにコネ続ける
「さあ延ばそう」と門番の持っている六尺棒を借りて延ばそうとするのだが、粘り気がなく上手く伸ばすことができない
つなぎに小麦粉が必要だということがわかっていないのだ。どんどんブツ切れになり、本来の形とかけ離れていくそば
見ている家臣たちはアレを食べさせられるのだと思うと気が気でない。見るに見かねて家来の一人が
家来:
「殿…恐れながら…」
アドバイスをしようとすると
殿様:
「控えよ!」
これ以上口出しすると首が飛びそうな剣幕で怒るので、もう黙って見ているしかない。
出来上がったものをいいかげんに茹でて、湯で醤油を溶いて家臣たちの前に出されるそば(のようなもの)
殿様:
「さあ 遠慮なく食べるがよい」
上機嫌な殿様
上司に気を遣うのは今も昔も変わらないこと。家来たちは粉っぽかったり、固くて噛み切れないそば(のようなもの)を顔を引きつらせながら完食した。
もちろんそんなものが体に良いわけがない。その夜は厠に行列ができ、朝まで途切れることがなかった…
そばが好評だったことに味を占めた殿様は「家臣が喜ぶから」とまたそばを打とうとする。
このままでは家臣たちの体がもたないと 危機を感じた家老が殿様に真実を報告すると
殿様:
「そうか、では控えよう」
懲りたかに思われた殿様だったが、ある日 禅寺で振る舞われた精進料理を見てまた家来たちを集める…
オチと江戸時代に食べられたそば切について
今度は精進料理を見て…以外にも、忠告した家老に対して「余のそばが食えんとは!手打ちにいたす!」というものもあります。前者の殿様の方が親しみやすい気がしますね笑
噺に登場するそばですが、歴史は古く平安の頃から食されてきたという記録があります。
元々は痩せた土地でも栽培可能なため、飢饉のための保存食として食べられたような節があり、鎌倉の頃になると「そばがき」といって、そばの実を石臼で挽いてコネて食べられました。
今のような麺の形状のものを汁につけて食べる「そば切り」が登場したのは江戸時代初期なので、意外にも歴史は浅いことになります。
今でも「そばがき」は昔ながらのお蕎麦屋さんでメニューにあったりしますが、現在「そば」といえば通常は「そば切り」の方です。
江戸はそば、上方はうどんが好まれたといいますが、面白いことに今でも蕎麦とうどん両方扱っている店舗では、関東地方「そば うどん」という看板に対し、関西地方「うどん そば」と表記が反対になっています。
蕎麦の方が茹で上がりが早く、せっかちな江戸っ子たちには好まれたという説もあります。
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