落語 本膳
長屋の男たちの元へ大家さんから手紙が届く
誰もまともに字が読めないものだから「これはひょっとすると長屋を追い出されるのでは?」と大騒ぎ
みんなで夜逃げでもしようかと相談していると、ひとり笑顔で与太郎がやってくる
この大変な時にのんきな野郎だと訝しがるが、どうやら与太郎は手紙の内容がわかっている様子
与太郎のところにも手紙は来たが、字が読めないので横町の先生に読んでもらったという
肝心の手紙の内容は 大家さんのところでお祝い事があったから、明日の晩に長屋のみんなを招いて本膳料理をごちそうしてくれるとのこと
男たちは「夜逃げをしなくていい」と安心したのも束の間、本膳料理とはすばらしい料理だと聞いたことはあるが、誰一人として頂く礼儀作法が分からない
そこで横町の先生に礼儀作法を教えてもらおうとみんなで押し掛ける
先生:
「教えるのはいいのだが、明日の晩の話。礼儀作法とは一朝一夕で身に付くものではない。私も招かれているからみんな私の真似するといい」
先生の真似をすればいいだけなら簡単だと喜ぶ長屋の男たち
さて次の日の晩、招かれた男たちの前に並べられた本膳料理。見た目も美しくおいしそうだ
与太郎:
「じゃあさっそくこの芋からいただこうかな…」
兄貴分:
「こらっ先生より先に食うんじゃない!」
怒られる与太郎を横目に先生の動きを注視する男たち
先生がお箸をとるとみんなが続いてお箸を取る
先生がお椀の蓋を取るとみんな続いてお椀の蓋を取る
先生がくしゃみをするとみんなが続いてくしゃみをする
先生:
「そんなことまで真似しなくていい」
先生がオッホンと咳をするとそれも礼儀作法だと思って真似をする男たち
先生の塗り箸がすべってしまい、料理を畳に落とすとみんなも落とす
先生:
「こら いいかげんにしないか」
先生が隣の男の脇をひじで小突くと、突かれた男はそのまた隣の男を小突くそれがどんどん隣へ流れていく
最後に小突かれた与太郎の隣には誰もいないので
与太郎:
「先生 私は誰を小突けばいいんで?」
落語 本膳会席料理と混同しやすい本膳料理
落語 本膳について
本膳料理とは本来 将軍や大名をもてなすために供される料理のこと。五の膳まであり、三汁七菜や三汁十七菜などで出される豪華な料理。さすがにお祝い事といっても長屋の男たちに出す料理ではないでしょう。
噺の中で出てきたのは正確に言うと会席料理ではないでしょうか。(略式の本膳料理と言えそうですが)
会席料理は一汁三菜を基本とする料理。前菜、煮物、焼き物などがコース料理のように出てきます。俳諧の席の最後にだされた軽い食事が始まりです。
同じ「かいせき」でも懐石料理は禅寺の習慣が起源で、茶道のお茶会で出されるようになった少量でも旬のものをふるまう料理。こちらは料理をもてなす側にもタイミングなどの作法があり慣れないと大変だったといいます。
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