落語 提灯屋のあらすじ オチの意味と噺の中の紋について
提灯屋
チンドン屋から提灯屋のチラシを受け取る長屋の若い衆
字ばかりのチラシで気になって家に持ち帰るが 長屋の者達が集まっても満足に読めるものがいない。
結局近所に住むご隠居に読んでもらおうということになる。
ご隠居:
「益々ご健勝とのこと大慶至極に候と…新規開店につき…」
結局チラシは提灯屋が新しく開店するというもの。「なんだそんなことか」とがっかりする若い衆達だったが次の一言に食いついた。
ご隠居:
「提灯の紋は無料で書き入れ、もし描けない紋があれば無料で進呈致すべく候」
書けない紋があれば無料で提灯をくれるというのだ
それならばと一人の男が提灯屋で
男1:
「鍾馗様がうわばみを胴切りにした紋を描いてくれ 判じ紋だ」
提灯屋はそんな紋は聞いたことがない 頭を捻るがわからない
男1:
「大蛇はうわばみ 胴切りにしたんだから片方が「うわ」もう片方が「ばみ」鍾馗様は剣で切ったから「剣片喰(けんかたばみ)」だ」
提灯をもらって帰る男 その戦果を聞いて次の男が提灯屋へ向かう
男2:
「このチラシはここのだな?お寺の地震の紋を描いてくれ」
またもや頭を捻る提灯屋
男2:
「お寺の地震なら鈴(りん)も堂(御本尊が納めてある厨子のこと)もひっくり返るだろう。だから「竜胆崩し(りんどうくずし)だ」
こんな調子で次々にやってくる長屋の男達 「みんなで提灯行列ができるぞ!」と気勢を上げ出す始末
それを見て気の毒に思ったご隠居が提灯屋へ向かう
お詫びにと高価な高張り提灯を注文するが 「また来たか」と身構える提灯屋
ご隠居:
「高張り提灯によくある紋だよ。丸に柏を頼む」
今まで散々な目に遭ってきた提灯屋は考え込むが ようやく閃いた
提灯屋:
「わかった!スッポンにニワトリのことだろう」
サゲ(オチ)のスッポンにニワトリについて
お住まいの地域によってはわかりにくいかもしれません。丸に柏がスッポンにニワトリになる理由は
まるというのは主に関西地方ですっぽんの符牒で甲羅が丸いところからきています。まる鍋というとスッポン鍋を指します。
かしわはポピュラーかと思いきや主に西日本で使用される言葉のようで鶏肉のこと
要はご隠居はシンプルに注文したのに今まで騙され続けたため、判じ物と解釈したからです。
お寺の地震で「竜胆崩し」の紋がどのようなものか調べてみましたが、ずばりそのものは出てきませんでした^_^;
関連記事
-
-
落語 紙入れのあらすじ 命がけだった江戸時代の不倫
紙入 出入り業者の新吉のところに得意先のおかみさんから手紙が届く 今晩は旦那が帰らないから云
-
-
落語 千早振るのあらすじ 江戸時代の豆腐事情とは
千早振る ご隠居のところに熊さんが血相を変えて転がり込んでくる。 娘が百人一首に凝りだし
-
-
落語 千両みかんのあらすじ 紀伊国屋文左衛門はみかんで財を成せたか?
千両みかん 大店の若旦那が夏の盛りに病気になってしまった 日に日に衰えていき、食べ物も喉
-
-
落語 抜け雀のあらすじ 駕籠かきとはどんな職業だったか
抜け雀 とある宿場町の宿屋に汚い身なりで泊まった若い男。 男は毎日酒を飲んで外に一歩も出
-
-
落語 ぞろぞろのあらすじ 雨の日に履かれたのは草履?
ぞろぞろ 少々荒れ果てたお稲荷さんの隣で茶屋を営んでいる老夫婦。茶屋だけではたいした儲けになら
-
-
落語 あくび指南のあらすじ 江戸時代人気のあった習い事とは?
あくび指南 町内にできた「あくび指南」の道場の看板を見て、新しいもの好きの男が興味を持つ ただ一
-
-
落語 強情灸のあらすじ 江戸っ子と上方の金銭感覚について
強情灸 よく効くと評判のお灸の店「峰」の灸はやたら熱いことでも巷では評判 そこへ言ってきたと
-
-
落語 片棒のあらすじ
片棒 けちが服を着て歩いているとケチで有名な赤西屋の大旦那。人呼んで赤西屋ケチ兵衛。 若いこ
-
-
落語 品川心中のあらすじ 心中失敗 実際に生き残った方はどうなる?
品川心中 品川の遊郭白木屋で売れっ子だった遊女のお染だが、寄る年波には勝てず、最近では客がめっ
-
-
落語 宿屋の富のあらすじ
宿屋の富 馬喰町の暇そうな宿屋にふらりと泊まりに来た小汚い身なりの男 主人はせっかく来てくれ