落語 二十四孝(にじゅうしこう)
乱暴者の熊五郎が大家さんのところへ駆け込んでくる
何でも母親と些細なことで喧嘩をし、母親に味方したおかみさんまで追い出したいから離縁状を二通書いてほしいという
あきれた大家さんは熊五郎に親孝行の道を説こうと中国の孝行息子の話を始める
大家さん:
「昔、中国に王祥(おうしょう)という親孝行な若者がおった。
彼には老いた母親がおったがある日 鯉が食べたいと言い出した
貧乏な王祥は池に鯉を獲りに行くが、生憎水面には厚い氷が張っている
そこで王祥は氷の上に裸になって横たわり、氷を溶かして鯉を獲ろうとした
するとみるみる氷は溶け、穴から鯉が飛び出してきたそうな」
熊:
「そんなことしたら自分もドボンだろう」
大家さん:
「これは孝行息子の母親を思う心が天に通じたんだ」
その後も次々と孝行息子の話を聞かせる大家さん
大家さん:
「こういう話もある。呉猛(ごもう)という男の家は貧乏で、蚊帳(かや)を買う金もない。
そのせいで母親は蚊の羽音で夜眠ることも出来ない。そこで呉猛は裸になり酒を自分の身体に吹き付けて寝た
蚊を酒の匂いで自分のところへおびき寄せて母親から遠ざけるためだ。
するとどうだろう 不思議なことにその晩、蚊は一匹も家に寄り付かなかった」
熊:
「それも例の天に通じたってやつですね」
それくらいなら俺もやってやろうと最初の目的を忘れて家に帰る熊五郎
さっそく家に帰ると「今から親孝行するぞ!」と宣言したかと思うと服を脱ぎ 酒を身体に吹きつけ始めた
そのうち「これは中にも入れたほうが効きそうだ」と残った酒を飲んでそのまま眠ってしまう
翌朝起きてみるとまったく蚊に刺されていない
熊:
「おい!二人とも見たか?これが天に通じるってやつだ」
おかみさん:
「何言ってんだい あんたが蚊に刺されないようにおっかさんが寝ないで団扇で扇いでたんだよ」
母親:
「あんたみたいな親不孝みたことないよ」
落語 二十四孝中国の書物 二十四孝(にじゅうしこう)とは?
二十四孝とは中国の元の時代に郭居業(かくきょぎょう)がまとめたと言われる24人の孝子(親孝行)の列伝
これに限らず江戸時代は道徳教育としてよく中国の書物が用いられたようです。
雷嫌いの母親の墓石に着物を着せた王褒
氷の張った池から母親のために鯉を獲ろうとした王祥
冬の竹林で竹の子を得ようとした孟宗
寝ている母親が蚊に刺されないように自分の身体に酒を吹き付けた呉猛
etc
落語 厩火事でもそうですが、大家さんと言うものは中国の故事や古典を引き合いに出すのが好きなようです。
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