落語 王子の狐のあらすじ 王子稲荷と実在する扇屋について
王子の狐
王子稲荷にお参りに来た熊五郎
その帰りに不思議な光景を目にする。狐が頭に葉っぱをのせ 瞬く間に若い女に化けたのだ。
熊:
「あの狐 誰かを化かそうとしてるんだな?」
しかし辺りを見回すと誰もいない。ターゲットはまさかの熊五郎本人。そこで熊五郎は逆に狐をハメてやろうと知り合いを装って女(狐)に話しかける
熊:
「よお!玉ちゃん!お久しぶりだね!」
女(狐):
「あらお久しぶり」
話しを合わせてくる狐を強引に扇屋という料理茶屋へ連れて行く熊五郎
扇屋に着くと店の者に
熊:
「二階は空いてるかい?酒も料理もどんどん持ってきてくれ」
熊五郎が酒を勧めると 飲んだことがないがないので渋る狐だったが、「飲める方だったじゃないか」と強引に飲ませると狐は酔って寝てしまった
それを見た熊五郎はそっと部屋を抜け出すと階下の店の者に
熊:
「連れが寝てしまったから一足先に帰るよ 勘定は財布を渡してあるから連れからもらってくれ」
と言ってお土産の玉子焼きまで用意させて帰ってしまった。店の店主は二階ので寝ている客がなかなか下りて来ないので不審に思い始める
女中が「ちょっと二階の様子を」と思い部屋の戸を開けると なんと狐が寝ているではないか
店の中は大騒ぎ 店主も女中もそれぞれ棒を持って狐を追い回す 狐は命からがら店を飛び出した
一方 熊五郎は狐を騙してやったと得意顔で友人の元を訪ねる
一部始終を話すと友人は
友人:
「狐はお稲荷さんの遣いだ そんなことをしたら祟りが怖い 謝りに言った方がいいんじゃないか?」
それを聞いて怖くなった熊五郎は翌日 手土産に牡丹餅を持って狐の穴を探しに行く。すると子狐がちょうど顔を出す どうやら昨日の狐の子供のようだ
熊五郎は親狐に「謝っといてくれ」と子狐に土産物の牡丹餅を渡して帰途についた
子狐は饅頭の箱を受け取ると 怪我をして寝込んでいる親狐の元へ
子狐:
「さっき昨晩は悪いことをしたって人間が謝りに来たよ」
親狐:
「何を今更 人をだましておいて」
子狐が土産の箱を開けるとおいしそうな牡丹餅が出てくる
子狐:
「おいしそうな牡丹餅だね!」
喜ぶ子狐に親狐は
親狐:
「やめときな!それはきっと馬の糞よ!」
舞台になった王子稲荷と実在する扇屋
狐に化かされる人間というのは定番ですが、人間が狐をだますというのは落語ならではです(笑)
王子稲荷といえば関東稲荷の総元締めで庶民の信仰を集めていました。
毎年大みそかの夜 関東一円の稲荷神社から狐が王子に集まり 女官に化けて行列を作り王子稲荷に参拝したという言い伝えもあり
この時できる狐火で翌年の農作物の出来栄えを占ったと言います。
地元の人たちはこの言い伝えになぞらえて、神木の周りに松明を炊き、狐火を見ようと王子を訪れた人たちに演出を行ったといいます。
噺の中に登場する料理茶屋「扇屋」は実在の店。厚焼き玉子が有名で、現在でも老舗の味を堪能することができます。「海老屋」という設定もありますが明治期に店を閉じたそうです。
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