*

落語 たらちねのあらすじ 女子が目指した武家屋敷への奉公について

公開日: : 最終更新日:2019/05/06 分かりにくい落ち, 滑稽噺 ,

たらちね

人は良いが貧乏なためになかなか嫁の来手がなかった八五郎に長屋の大家さんが縁談を持ち込んだ。

しかも、相手の器量は人並み以上、年齢も二十五と八五郎の年とちょうどいい。家事全般の花嫁修業は済ませており、家財道具まで持参するという。
嫁入り道具
願ってもない条件だが、逆に八五郎はいぶかしがる。大家さんに事情を尋ねるとやはり少々傷ががあるという。

八五郎「どうも話がうますぎると思った。いいことずくめの嫁が俺のところに嫁ぐわけありませんやね。傷っていうと…横っ腹に穴が空いてるとか?」
大家さん「割れた花瓶じゃあるまいし。傷というのは他でもない、実は屋敷奉公のせいで言葉が丁寧すぎるんだ」
八五郎「丁寧すぎる?いいじゃないですか、俺なんか乱暴すぎるって怒られるんだから、こいつはちょうどいい俺と連れ添ってりゃそのうちぞんざいになりますよ。ぜひその縁談進めてください」

祝言の日取りも決まり八五郎は大はしゃぎ、夫婦でご飯を食べる練習をして大家さんにあきれられる始末。

そうこうしているうちに待ちに待った日になり、大家さんがお嫁さんを連れてきた。婚礼の後二人きりになるが慌てものの大家さんはお嫁さんの名前を八五郎に伝え忘れる。
花嫁
八五郎「いけねえ、名前を聞いてなかった。お前さんの名前は?」
花嫁「自らことの姓名は、父は元京都の産にして姓は安藤名は慶三、字を五光、母は千代所と申せしが、わが母三十三の折、一夜丹頂鶴の夢を見わらわを孕めるがゆえに、たらちねの胎内を出しときには鶴女鶴女と申せしが、それは幼名、成長の後これを改め清女と申しはべるなり」

八五郎「恐ろしく長い名前だな。呼ぶのも大変だ。明日相談しよう」

あくる朝、嫁は朝食の支度を整え、両手を付いて丁寧な言葉で八五郎を起こす。

花嫁「あ~ら我が君、もはや日も東天に召しまさば、早々にご起床召され。うがい手水に身を清め、神前仏前に御灯明を供え、御飯召し上がって然るびょう存じはべる。恐惶謹言」
八五郎「おい何を言ってるんだ。朝飯で恐惶謹言?なら酒を飲んだら、よ(酔)ってくだんのごとしかい?」

さげの部分について

手紙
恐惶謹言…手紙の最後に記す、ものすごく丁寧な挨拶文。八五郎は手紙の終わりにつける通常の決まり文句”因って件の如し(よってくだんのごとし)”で応じている。

女性の屋敷奉公について

江戸時代、女子には教育は不要とする考え方も根強かった一方で、良妻賢母となるための読み書き、礼儀作法、舞踊などを身に付けさせる親も多かったといいます。

多くの教養を身につけた後、武家や商家に奉公に出て実践学習することが理想とされました。

屋敷奉公の職に着くのは狭き門であり、そのキャリアは玉の輿のための条件の一つとなったそうです。
屋敷奉公経験者なのに普通の町人である八五郎に嫁いでしまうあたりは、落語の面白いところだと思います。

落語一覧へ

関連記事

小間物かんざし

落語 小間物屋政談のあらすじ サゲのしょい(背負い)とは?

小間物屋政談 働き者で評判の小間物屋 相生屋小四郎。 江戸から上方へ行商に行くことを伝えるた

記事を読む

落語 やかんのあらすじ 薬缶その他語源とは?

やかん ご隠居の家へ店子の熊五郎が遊びに来る。二人とも暇人だ。 熊五郎は浅草の観音様に行って

記事を読む

火事息子

落語 火事息子のあらすじ 町火消しと定火消しの違いとは

火事息子 火事好きが高じて町火消しになりたいという質屋の若旦那。 大旦那は一人息子にそんなに

記事を読む

紙入れ

落語 紙入れのあらすじ 命がけだった江戸時代の不倫

紙入 出入り業者の新吉のところに得意先のおかみさんから手紙が届く 今晩は旦那が帰らないから云

記事を読む

金蔵

落語 ねずみ穴のあらすじ オチの五臓の疲れとは?

ねずみ穴 親の遺産をすっかり食いつぶしてしまった遊び人の竹次郎が借金を申し込みに兄の元をおとずれる

記事を読む

湯のみ

落語 二番煎じのあらすじ 江戸時代の治安維持のシステムとは

二番煎じ 寒い夜に番小屋に町の旦那衆が夜回りのために集まっている。 夜回りのために外に出

記事を読む

寝床

落語 寝床のあらすじ 義太夫とは何か?

寝床 義太夫に凝ってしまった大店の旦那。本人は素人としてはなかなかの腕前と思い込んでいるが、聞

記事を読む

落語 宗論のあらすじ 宗論はどちらが勝っても釈迦の恥

宗論 店が忙しいというのに若旦那が朝から姿を見せない。 番頭の話によると どうやら若旦那はキ

記事を読む

骨董

落語 金明竹(きんめいちく)のあらすじ 出てくる道具は何なのか?

金明竹 甥っ子の松公を預かることになった道具屋の主人だったが 松公はどこか抜けていて、何をやら

記事を読む

ろくろ首

落語 ろくろ首のあらすじ 江戸時代見世物にもあったろくろ首

ろくろ首 二十五になっても母親と二人暮らしの与太郎がお嫁さんがほしいと伯父さんに相談する。

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

落語 三枚起請のあらすじ オチの朝寝がしてみたいの意味と起請文とは?

三枚起請 吉原の花魁にいれこんでいる猪之(いの) それを棟梁が「

落語 家見舞(こいがめ)のあらすじ

家見舞い 日頃世話になっている兄貴分が引っ越しすることを聞いた長屋暮

心眼タイトル
落語 心眼のあらすじ 薬師如来(薬師様)のご利益とは?

心眼 按摩の梅喜が目が見えないことを弟に馬鹿にされて帰ってくる

落語 船徳のあらすじ 吉原通いに使われた猪牙舟(ちょきぶね)

船徳 柳橋の馴染みの船宿で居候をしている若旦那。なにやら思うとこ

落語 権兵衛狸のあらすじ

権兵衛狸 一人暮らしの権兵衛が一杯飲んで寝ようとしていると いき

→もっと見る

PAGE TOP ↑