落語 御慶(ぎょけい)のあらすじ 宝くじの元になった富くじ
御慶
富くじが好きでたまらない八五郎。昨夜見た夢が縁起のいいものだったのでさっそく買いに行きたいが先立つものがない。
仕方がないので女房の着物を無理やり脱がせるとそれを元手に富くじを買いに行ってしまう。
女房:
「富くじなんかにうつつを抜かすんなら離縁しとくれ!」
女房は八五郎の背中に向かって叫ぶが聞こえない様子
さて八五郎が昨夜見た夢というのが”鶴が梯子の上に止まっている”という内容
札の番号を選ぶにあたって、鶴は千年だから鶴の千、それが梯子にとまっていたので八四五(はしご) と語呂合わせ鶴の千八百五十四番という札を買い求めるが、あいにく売り切れてしまっていた。
がっかりして帰る道すがら占い師にそのことを話すと
占い師:
「梯子は下から昇るものだから八四五を五四八と読みあなたが買うべきは鶴の千五百四十八番です」
と言われ買いに戻ってみると、その札は残っていた。そしてその札がなんと大当たり。千両もの大金を手にしてしまう。
腰を抜かしながら千両を受け取ると 米や味噌の掛け金を支払い、大家さんに溜まった家賃を払い残った金でやりたいことがあるという八五郎
裃(かみしも)を買い脇差を差して年始の挨拶回りに出たいというのだ。
そして元旦、格好だけはそれなりに整えた八五郎だったが、挨拶の口上がわからない。大家さんに相談すると
大家:
「向こうさんに『おめでとう』と言われれば『御慶』 『お上がりください』と言われれば『永日』と言いなさい」
そうアドバイスを受け 長屋を回りながら御慶を連発していると見知った友人にばったりと会う
友人:
「なんだ?ずいぶん立派な格好しているな?まあいいや おめでとう」
八五郎:
「御慶」
そこで「御慶」を「どこへ?」と聞き間違えた友人が
友人:
「ああ、初詣の帰りだよ」
現代よりもギャンブル性が高かった富くじ
時期によって多少異なりますが、噺の中で八五郎が買った富くじは一枚で一分。現代の25,000円程に相当し、一枚300円で買えてしまう年末ジャンボと比べものにならないくらい高価なものでした。
そのため富くじは気軽に楽しむ娯楽よりも賭博に近く祈るような気持ちで抽選を見守ったことでしょう。25,000円払って何も手元に残らないとか考えたくもないです^_^;
八五郎のように買い続けて当選すればいいですが、身を持ち崩した人の話も伝わっています。
当選金は最高で千両。千両分限(せんりょうぶげん)といって千両あれば金持ちの部類だった江戸時代。一攫千金を夢見るのは今も昔も変わらない人の性といえるのではないでしょうか。
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