落語 天災
どんな些細なことにも噛み付く怒りっぽいことで有名な熊五郎
今日も女房と喧嘩をしたようで、大家さんのところへ三行半を代わりに書いてくれと頼みに来た
熊五郎の気の短さにあきれたご隠居はこう諭す
大家:
「書く前におまえさんに聞きたいことがある。店の前を歩いていると小僧さんに水を引っ掛けられたらどうする?」
熊五郎:
「そりゃあ怒鳴りつけますね」
大家:
「では急に雨が降ってきたらどうする?天に向かって怒鳴るのかい?」
熊五郎:
「いやさすがに天が相手なら諦めますよ」
大家:
「そうだろう。小僧さんではなく天から水を掛けられたと思えば怒らなくてすむ。天から来た災い 即ちこれを天災というのだよ。何事も天災と思えば怒らないですむものだよ」
うまいこというなと納得した熊五郎
その帰り道さっそく店頭で小僧さんに水を引っ掛けられたが「今のは天が掛けたんだ」と腹を立てない熊五郎
職人が屋根からうっかり落とした瓦が頭を直撃しても
熊五郎:
「お~痛てえ これも天から降ってきたんだな」
職人:
「すいません 私が落としたんで…」
熊五郎:
「うるせえ 天から降ってきたってのがわからねえのか!ぶん殴るぞ」
家に帰り先程聞いた天災の話を女房にすると、熊五郎がニコニコしているのが気味が悪いが、なんだかんだで仲直りをする二人
ときに隣の家が騒がしいのに気がつく熊五郎。どうやら隣の八五郎の所に前妻がたずねてきて揉めているようだ
あいつは天災の話を知らねえから揉め事を起こすんだ。収めるために八のところへ向かう熊五郎
熊五郎:
「おい八 前の女房がゴネに来たと思うから腹が立つんだ。天から女房が降ってきたと思えば腹は立たない何事も天災だと思うんだ」
八五郎:
「何を言ってるんだ?来たのは天災じゃなくて前妻だ」