落語 天狗裁き
亭主の熊が昼寝をしながらブツブツと寝言を言っているのを女房のおみつが見ている。
おみつはどんな夢を見ているのかが気になって仕方がない。
みつ:
「ちょっとおまえさん起きとくれ。今どんな夢をみてたんだい」
熊:
「夢?夢なんて見ちゃいねえよ」
みつ:
「そんな、わたしにも言えない夢なのかい?くやしい~」
熊:
「見てねえものは見てねえよ!」
夫婦喧嘩の声を聞きつけて隣に住んでいる大工の八五郎が飛んできた
わけを聞くと
八:
「何?夢の話なんかでけんかしてんのか?くだらねえ」
といいつつも
八:
「おい熊 どんな夢を見たんだ?親友の俺になら言えるだろ?」
熊:
「だから夢なんて見てねえんだって!」
八:
「なんだとこの野郎!俺にも言えねえっていうのかよ!」
今度は八五郎とけんかになる。
そのけんかの声を聞きつけて 長屋の大家さんが飛んでくる
大家:
「二人ともよしなさい。夢の話で喧嘩だなんてみっともない」
熊:
「まったくですよ」
大家:
「で?どんな夢を見たんだい?大家といえば親も同然 私になら話してもいいだろう?」
熊:
「だから夢なんて見てないっていってるでしょ」
大家:
「大家の私にも言えないなんて!きっととんでもない夢を見たんだな。おまえのようなやつは長屋から出て行きなさい」
熊:
「そんなめちゃくちゃな お奉行様に判断してもらいましょう」
奉行所にて
奉行:
「なに?原因は夢の話とな?そのような理由で長屋を追い出すとは!出て行くには及ばん。吟味するまでもない」
ほっとする熊
奉行:
「熊そちはこの後残るように」
熊:
「お奉行様なんでございましょう?」
奉行:
「してそちはどのような夢を見たのだ?奉行の私になら話せるであろう?」
熊:
「だから見てないんですって」
奉行:
「なんだと!奉行の私にも言えんとは。こやつを松の木の上に括りつけておけ!」
松の木の上に括りつけられて途方に暮れる熊だったが
なんと天狗が飛んできて縄を解いてくれた
天狗:
「人間ではないわしになら話せるだろう?どんな夢を見たんだ?」
熊:
「ひ、ひえ~夢なんてなんにも見てません!!」
天狗:
「なんだと!引き裂いてくれるわ!」
熊:
「ああ~」
っと悲鳴を上げたところで目が覚めた
みつ:
「うなされてたねえ。どんな夢を見てたんだい?」