落語 寿限無(じゅげむ)のあらすじ 寿限無とは仏教語?
寿限無
熊さん夫婦の家に男の子が生まれます。
その子供に名前をつけるのが親としての最初の仕事になりますが、二人ではなかなかいい名前が思い浮かばないようで、お寺の和尚さんのところに熊さんが知恵を借りに行きます。
熊:
「先日男の子が生まれまして和尚さんに名前をつけてもらいたいんで」
和尚:
「それはおめでとう では考えてみよう」
熊:
「せっかくなんで縁起がよくて長生きする名前をお願いしますよ」
和尚さんは経典や故事から次から次へとアイデアを出してくれますが
熊:
「こんなにあると迷いますね」
和尚:
「この中から一つ選んでつけるといい紙に書いてあげよう」
熊:
「ありがとうございます これはみんないい名前なんですね」
家に帰る熊さん
あれをつけてこれをつけないと後で後悔したくないと
なんと書いてもらった名前をそっくりそのままつけてしまったので
寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚 水行末雲行末風来末 食う寝るとろこに住む所 やぶら柑子の藪柑子 パイポパイポ パイポのシューリンガン グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの長久命の長助
というとんでもなく長い名前の子供になってしまった
この名前がよかったのか子供は元気に成長して、そのうち学校に通うようになります。
友達:
「寿限無寿限無~長助く~ん学校いこ~」
母親:
「あらまあ、竹ちゃんお迎えかい?ありがとうね うちの寿限無寿限無~長助ったらまだ寝てるのよ起こしてくるわね」
部屋に行くと寿限無寿限無~長助はまだ寝ています
母親:
「寿限無寿限無~長助いいかげんに起きな!竹ちゃんが迎えにきてるわよ」
まったく起きる様子のない寿限無寿限無~長助
友達:
「おばちゃん遅れちゃうからもう行くよ~」
寿限無寿限無~長助にはちょっとワンパク過ぎるところもあったようである日のこと
金坊:
「寿限無寿限無~長助にぶたれて頭に瘤ができた~」
母親:
「なんだって!ちょいとおまえさん寿限無寿限無~長助が金坊の頭をぶって瘤ができちまったんだって」
熊:
「なに!うちの寿限無寿限無~長助が どれどれ?金ちゃん瘤なんてないじゃないか」
金坊:
「あんまり長いから瘤がひっこんじゃった」
寿限無寿限無~長助を分解して解説
お寺で書いてもらった紙に書かれた名前をそのままつけてしまった熊さん夫婦。どちらかがストップをかけなかったのか?落語の面白いところではあります。
わかりにくい用語もありますので分解して解説します。
寿限無
寿限り無し=限りない長寿のこと。仏教の経典に出てくる(らしいです)
無量寿(阿弥陀様の別名)とイコールだという意見もあります。
五劫のすりきれ
「劫」は「こう」と読み、仏教の単位。天人が3000年に一度天から降りてきて岩を衣でそっとなでる、その岩が擦り切れてなくなってしまうのが一劫。つまりとてつもなく長い時間であるということをあらわします。
浄土真宗の正信偈というお経(正しくは偈文)に五劫思惟之摂受(ごこうしゆいししょうじゅ)という一文が出てきます。阿弥陀様は大変長い時間考えられたというような意味です。
海砂利水魚
海の底にある砂や、水の中の魚のように尽きることがないこと
水行末、雲来末、風来末
水、雲、風の行き先は果てがわからないこと
食う寝るところに住むところ
人が生きていく上で欠かせない、食べ物と家
藪ら柑子のぶら柑子
生命力の強いヤブコウジのこと
パイポ
中国にあったという架空の国
シューリンガン
中国にあったという架空の国の王様の名前
グーリンダイ
シューリンガン国王のお后
ポンポコナー、ポンポコピー
シューリンガン国王とグーリンダイ皇后の子供
この一家は大変長生きをしたという架空の話
長久命
長く久しい命(寿命)となることを願って文字をつなげたもの
長助
長生きすることを願った「長」の字を使った名前
関連記事
-
-
落語 猫の忠信のあらすじ 義経千本桜のパロディー部分を解説
猫の忠信 次郎吉が長唄の稽古に行こうと同じ長屋に住む六兵衛を誘いにくるが 六兵衛はもう馬鹿馬鹿しく
-
-
落語 開帳の雪隠(かいちょうのせっちん)のあらすじ 回向院で行われた出開帳とは
開帳の雪隠 両国回向院のそばで子供相手に駄菓子屋を営んでいる老夫婦 今は出開帳の真っ最中
-
-
落語 だくだくのあらすじ 江戸時代の刑罰とは
だくだく 裏長屋に引っ越してきた八五郎だったが、家財道具が何もない。 これでは格好がつか
-
-
落語 紀州のあらすじ 徳川宗家と御三家将軍継承について
紀州(きしゅう) 七代将軍の家継が8歳の若さで亡くなってしまった。 跡継ぎがいないため、
-
-
落語 大山詣りのあらすじ 江戸時代の行楽だった寺社参拝
大山詣り 長屋の男衆が揃って大山詣りに出かけることになった。行楽半分、信心半分の旅ではあるが、
-
-
落語 三枚起請のあらすじ オチの朝寝がしてみたいの意味と起請文とは?
三枚起請 吉原の花魁にいれこんでいる猪之(いの) それを棟梁が「本気になるなと」釘を刺すが、猪
-
-
落語 御慶(ぎょけい)のあらすじ 宝くじの元になった富くじ
御慶 富くじが好きでたまらない八五郎。昨夜見た夢が縁起のいいものだったのでさっそく買いに行きた
-
-
落語 千早振るのあらすじ 江戸時代の豆腐事情とは
千早振る ご隠居のところに熊さんが血相を変えて転がり込んでくる。 娘が百人一首に凝りだし
-
-
落語 権兵衛狸のあらすじ
権兵衛狸 一人暮らしの権兵衛が一杯飲んで寝ようとしていると いきなり家の戸を叩く音がする。同時
-
-
落語 厩火事(うまやかじ)のあらすじ 高収入だった?江戸時代の女性髪結い師
厩火事 髪結いのお崎は亭主の八五郎とすぐに夫婦喧嘩になってしまう。 今日も喧嘩をしてご隠
- PREV
- 落語 天狗裁きあらすじ
- NEXT
- 落語 紙入れのあらすじ 命がけだった江戸時代の不倫