*

落語 寿限無(じゅげむ)のあらすじ 寿限無とは仏教語?

公開日: : 最終更新日:2019/06/21 滑稽噺 , , ,

寿限無

熊さん夫婦の家に男の子が生まれます。

その子供に名前をつけるのが親としての最初の仕事になりますが、二人ではなかなかいい名前が思い浮かばないようで、お寺の和尚さんのところに熊さんが知恵を借りに行きます。
お寺
熊:
「先日男の子が生まれまして和尚さんに名前をつけてもらいたいんで」
和尚:
「それはおめでとう では考えてみよう」
熊:
「せっかくなんで縁起がよくて長生きする名前をお願いしますよ」

和尚さんは経典や故事から次から次へとアイデアを出してくれますが
経典
熊:
「こんなにあると迷いますね」
和尚:
「この中から一つ選んでつけるといい紙に書いてあげよう」
熊:
「ありがとうございます これはみんないい名前なんですね」
短冊
家に帰る熊さん

あれをつけてこれをつけないと後で後悔したくないと
なんと書いてもらった名前をそっくりそのままつけてしまったので

寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚 水行末雲行末風来末 食う寝るとろこに住む所 やぶら柑子の藪柑子 パイポパイポ パイポのシューリンガン グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの長久命の長助

というとんでもなく長い名前の子供になってしまった

この名前がよかったのか子供は元気に成長して、そのうち学校に通うようになります。

友達:
「寿限無寿限無~長助く~ん学校いこ~」
母親:
「あらまあ、竹ちゃんお迎えかい?ありがとうね うちの寿限無寿限無~長助ったらまだ寝てるのよ起こしてくるわね」

部屋に行くと寿限無寿限無~長助はまだ寝ています

母親:
「寿限無寿限無~長助いいかげんに起きな!竹ちゃんが迎えにきてるわよ」

まったく起きる様子のない寿限無寿限無~長助

友達:
「おばちゃん遅れちゃうからもう行くよ~」

寿限無寿限無~長助にはちょっとワンパク過ぎるところもあったようである日のこと

金坊:
「寿限無寿限無~長助にぶたれて頭に瘤ができた~」
母親:
「なんだって!ちょいとおまえさん寿限無寿限無~長助が金坊の頭をぶって瘤ができちまったんだって」
熊:
「なに!うちの寿限無寿限無~長助が どれどれ?金ちゃん瘤なんてないじゃないか」
金坊:
あんまり長いから瘤がひっこんじゃった

寿限無寿限無~長助を分解して解説

お寺で書いてもらった紙に書かれた名前をそのままつけてしまった熊さん夫婦。どちらかがストップをかけなかったのか?落語の面白いところではあります。

わかりにくい用語もありますので分解して解説します。

寿限無

寿限り無し=限りない長寿のこと。仏教の経典に出てくる(らしいです)
無量寿(阿弥陀様の別名)とイコールだという意見もあります。

五劫のすりきれ

「劫」は「こう」と読み、仏教の単位。天人が3000年に一度天から降りてきて岩を衣でそっとなでる、その岩が擦り切れてなくなってしまうのが一劫。つまりとてつもなく長い時間であるということをあらわします。

浄土真宗の正信偈というお経(正しくは偈文)に五劫思惟之摂受(ごこうしゆいししょうじゅ)という一文が出てきます。阿弥陀様は大変長い時間考えられたというような意味です。

海砂利水魚

海の底にある砂や、水の中の魚のように尽きることがないこと

水行末、雲来末、風来末

水、雲、風の行き先は果てがわからないこと

食う寝るところに住むところ

人が生きていく上で欠かせない、食べ物と家

藪ら柑子のぶら柑子

生命力の強いヤブコウジのこと

パイポ

中国にあったという架空の国

シューリンガン

中国にあったという架空の国の王様の名前

グーリンダイ

シューリンガン国王のお后

ポンポコナー、ポンポコピー

シューリンガン国王とグーリンダイ皇后の子供
この一家は大変長生きをしたという架空の話

長久命

長く久しい命(寿命)となることを願って文字をつなげたもの

長助

長生きすることを願った「長」の字を使った名前

落語一覧へ



関連記事

落語 天災のあらすじ

天災 どんな些細なことにも噛み付く怒りっぽいことで有名な熊五郎 今日も女房と喧嘩をしたよ

記事を読む

首ったけ

落語 首ったけのあらすじ 吉原遊郭から遊女の逃亡を防いだ仕組みとは?

首ったけ 吉原の馴染みの花魁 紅梅がなかなかやって来ないので座敷で一人イライラしている辰

記事を読む

落語 権兵衛狸のあらすじ

権兵衛狸 一人暮らしの権兵衛が一杯飲んで寝ようとしていると いきなり家の戸を叩く音がする。同時

記事を読む

高田馬場

落語 高田馬場のあらすじ 人気があった敵討ちについて

高田の馬場 浅草奥山観音様の境内、参拝客を当て込んだ出店や大道芸などを目当てに訪れる観光客もあって

記事を読む

落語 王子の狐のあらすじ 王子稲荷と実在する扇屋について

王子の狐 王子稲荷にお参りに来た熊五郎 その帰りに不思議な光景を目にする。狐が頭に葉っぱ

記事を読む

落語 提灯屋のあらすじ オチの意味と噺の中の紋について

提灯屋 チンドン屋から提灯屋のチラシを受け取る長屋の若い衆 字ばかりのチラシで気になって

記事を読む

落語 猫の災難のあらすじ

猫の災難 酒は飲みたいが買う金はない そんな八五郎のところへ猫が鯛の頭をくわえてやってきた。猫

記事を読む

落語 初天神のあらすじ 初天神の日と縁日の意外な正体とは?

初天神 大工の熊五郎が一人で初天神に出かけようとするが、女房に倅の金坊を連れていけと言われてしまう

記事を読む

居残り佐平次

落語 居残り佐平次のあらすじ サゲオチのおこわにかけるとゴマ塩だからの関係は?

居残り佐平治 遊び人の佐平次が仲間に品川の遊郭に繰り出して派手にやろうと提案する。 佐平次:

記事を読む

落語 片棒

落語 片棒のあらすじ

片棒 けちが服を着て歩いているとケチで有名な赤西屋の大旦那。人呼んで赤西屋ケチ兵衛。 若いこ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

落語 野ざらしのあらすじ オチの馬の骨だったか!の意味とは?

野ざらし 長屋の八五郎が隣に住む先生の元をたずねる。 昨晩

落語 化け物使いのあらすじ 驚愕の奉公人の年間休日数とは?

化け物使い 人使いの荒いことで有名なあるご隠居 朝から晩まで働

馬
落語 付き馬のあらすじ オチの馬に行けとは?遊郭での勘定のルール

付き馬 吉原遊郭のある店に金持ち風の男がと登楼してくる。その晩

落語 黄金餅のあらすじ 西念が飲み込んだ金について

黄金餅 ケチ坊主の西念が病で寝込んでいると聞いて隣に住む金兵衛が

金蔵
落語 味噌蔵のあらすじ 防火対策の目塗りとは?

味噌蔵 ケチで有名な商屋の旦那の奥さんに男の子が生まれたというと

→もっと見る

PAGE TOP ↑