蒟蒻問答(こんにゃくもんどう)のあらすじ 修行僧について
蒟蒻問答
昔はやくざ者だったが今ではすっかり足を洗い蒟蒻屋を営んでいる六兵衛。足を洗ったというものの面倒見の良さから江戸にいられなくなった者たちがたずねてくる。
そういう者たちを家において、しばらくすると仕事を紹介したり、草鞋銭を持たせて送り出していたので居候が絶えない。
今 居候を決め込んでいるのが八五郎という男。何か仕事をするわけでもなく二ヶ月経ちすっかり居ついてしまった。
六兵衛:
「おい八 このところ蒟蒻屋に人相風体の悪い男が出入りしていると村中で噂になってやがる。世間体が悪いからお前も何か仕事をしねえか」
気の進まない八五郎だったが、ちょうど空きのあった寺の住職におさまってしまった。
ただ住職といってもお経が読めるわけでも、行(ぎょう)をするわけでもない。寺男の権助と毎日本堂で酒を飲んで寝転んでいる
お経も読めないくせに「この村には弔いがないから食えねえ」と不満をいう始末で住職らしいのは頭が坊主ということだけ
そんな八五郎の寺にある日 修行僧が訪ねてきた
修行僧:
「禅家の御寺とお見受け致します。大和尚ご在宅なれば、修行のため一問答願わしゅう存じます」
門前の「葷酒山門に入るを許さず」と刻まれた戒壇石を見て問答を申し込んできたのだ
慌てた八五郎は「大和尚はいない」ごまかしたが修行僧は
修行僧:
「では命のあらん限り毎日参りますのでどうぞよろしく」
と言い残して去っていった
困った八五郎たちは、恥をかく前に夜逃げして別の空き寺へ移ろうと用意をしているところへ六兵衛がやってきた。
二人から事情を聞いた六兵衛は
六兵衛:
「じゃあ俺が大和尚に化けてその坊主を追っ払ってやろう。なあに簡単だ、何か言われても耳が遠いふりをして黙ってればそのうち疲れて帰るだろう。それでもダメなら角塔婆で張り倒して煮え湯をぶっかけちまえ」
翌日修行僧がやったきた。大和尚のふりをした六兵衛に修行僧は禅問答を仕掛けるが、六兵衛は知らん顔をしている。修行僧は学識があるせいか、勝手に解釈をする。
修行僧:
「大和尚は禅家荒行のうち無言の行中と心得ました。しからば我も無言にて問う!」
修行僧が指で輪を作ると六兵衛が頭の上で手を広げて見せる。
修行僧 今度は手を開いて十本の指を突き出す
すると六兵衛はパッと片手を開いて見せる。
もう一問と三本の指を六兵衛に見せると
六兵衛は目の下を押さえる
すると修行僧は
修行僧:
「大和尚に遠く及びません 三年修行してまいります。これにて御免」
と本堂から走り去るところを八五郎が追いかけて呼び止める
八五郎:
「おい!何があったんだどっちが勝ったんだ説明してくれ」
修行僧:
「大和尚は禅家荒行のうち、無言の行のさなかと心得、こちらも無言で問いかけました
まず、大和尚の胸中は?との問いかけに”大海の如し”という鮮やかなるお答え
続いて”十方世界は?”に対し”五戒で保つ”とはお見事
及ばずながらもう一問と”三尊の弥陀は?”との問いかけに”目の下を見よ”とのお答えとは拙僧の及ぶところではございません」
感心しながら六兵衛の元へ戻るとなぜかカンカンに怒っている
六兵衛:
「あれは修行僧じゃねえ 物乞いの坊主だ俺の蒟蒻を貶しやがった
あの坊主 おめえんとこの蒟蒻はこんな小せえだろう!っていいやがった
俺は大抵のことじゃあ怒らねえが商品を貶されちゃあ黙っていられねえ。こんなにでけえやいって言ってやった
するとどうだ10丁でいくらだ?っていうから
ちょっと高けえかなと思ったけど500だって言ってやった
するとあのケチ坊主300にマケろって言いやがったから
あっかんべえをした
蒟蒻問答たずねてきた修行僧について
我は越前の国永平寺学堂におりまする沙弥托善(しゃみたくぜん)諸国雲水行脚の僧にございます
本文中では省略しましたがこのようなセリフが入ります
永平寺から来たということは宗派は曹洞宗ということになります。
※一般的に曹洞宗、臨済宗、黄檗宗を総称して禅宗といいます。禅家=禅宗の寺、禅宗の僧侶
沙弥(しゃみ)は現代では得度前の見習い期間の僧である事を意味します
托善(たくぜん)というのがたずねて来た修行僧の名前です
門前の石に刻まれた「葷酒山門に入るを許さず(くんしゅさんもんにいるをゆるさず)」とは修行の妨げになるようなものを寺院内に持ち込むことを許さないという意味
さすがに現代では諸国を行脚して禅問答はしていないでしょうが、永平寺では常に200名以上の雲水が修行に励んでおり700年以上の伝統を保っています。
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