落語 家見舞(こいがめ)のあらすじ 江戸時代の水道事情について
家見舞い
日頃世話になっている兄貴分が引っ越しすることを聞いた長屋暮らしの八と熊
引っ越し祝いに水甕を贈ろうというが 二人揃ってお金がない
なんとかなるだろうと店に行ってみるが お金がないので何とかなるわけもない
あきらめかけていたところに店主からの提案が
店主:
「こちらの甕ならその予算でもいいですよ」
見るとそこにはなかなか立派な甕が。二人は掘り出し物だと喜んだが 実はこの甕 元は壊した家の便所に埋まっていた便壷
本当に掘り出し物だ
洗ってしまえばわからないだろうと早速買った甕を川で洗う二人 なかなか臭いが消えないが、水を張ってしまえばどうってことないと兄貴分のところへ
立派な水甕(実は便壷)を贈られた兄貴分は「これは高かったろう」と大喜び 女房が何か作るから一杯やってけという流れになる
「いい家ださすがは兄貴だ」と酒を飲んでいると 肴が出てくるが豆腐や吸い物など自分達が贈った水甕の水を使ったものばかり
水甕の正体が元は便壷だと知っている二人は料理が出てくるたびに「今豆腐を断ってるんで」などと妙な言い訳するので 兄貴分もあきれ顔
そこへこの家のおかみさんが「水甕の水が妙に濁っている」と言いに来る
兄貴分:
「甕なんて使い始めはこんなもんだ おまえたち今度来るときにフナでも持ってきてくれ。水をきれいにするっていうからな」
八:
「それにはおよびません。
さっきまでコイ(肥え)が入ってましたから」
江戸時代の水事情について
現代のように各家庭に水道がない時代、生活用水として使う水を井戸から汲んできて水を甕に貯めておく必要がありました。
よくテレビで見かけるアフリカの人々が水を求めて大きな甕を持って水場を往復する光景。
長屋の中心に共同の井戸があったので、何キロも歩いて汲みに行く必要はありませんでしたが、実はこれが曲者
江戸時代の長屋の見取り図を見ていると井戸の近くに便所があったり芥入れ(ゴミ捨て場)があったりで想像を絶する不衛生!
今でも水を張ったバケツを屋外に放置しておくとボウフラは湧きますし、藻のようなものが生えて水が濁ってきます。これを料理や洗濯に使っていたと想像してみてください…
消毒や殺菌といった概念のない江戸時代、こいがめに汲んだ水も品質は似たり寄ったりだったのではないでしょうか(^^;
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