落語 首ったけのあらすじ 吉原から遊女の逃亡を防いだ仕組みとは?
首ったけ
吉原の馴染みの花魁 紅梅がなかなかやって来ないので座敷で一人イライラしている辰
隣の部屋で紅梅と別の客がドンちゃん騒ぎをしているのが聞こえるので、それもイライラに拍車をかける
とうとう店の者を呼びつけて「いつまで待たせるんだなんとかしろ」と文句を言い、それを聞いた紅梅が慌てて辰の元へやってくる。
それでもイライラが収まらない辰は紅梅に不満をぶつけ、それを紅梅がなんとかなだめる格好に
だんだん紅梅の方もその日の忙しさもあって腹を立て「それならお帰りよ」とつい言ってしまう
売り言葉に買い言葉で辰も「もう二度と来るか」と店を出たものの夜が更けていてどのこ店も開いていない
どうしたもんかと思案していると、向かいの店の戸が開き 店の若い衆が顔を出した
若い衆:
「これはこれはお向かいの紅梅姐さんの良い人 辰さんじゃございませんか」
若い衆は辰のことを知っているようで愛想よく話しかける。
辰はかくかくしかじかと今に至った経緯を話すと若い衆は「それはひどい目に遭いましたね」と話を聞き
若い衆:
「うちの花魁の若柳があなたに岡惚れしているらしくて、いつもあなたの話をしてますよ」
とうまいことを言うもんだから辰もその気になって店に上がってしまう。その夜は若い衆の言う通り若柳に大いにもてて辰は上機嫌。それからというもの何度も通う馴染み客になってしまった。
ある日、半鐘の音が吉原のほうから鳴り響いた。
辰も若柳のことが気になって仕事を放り投げて吉原へ向かうが、吉原の大門辺りは黒山の人だかりでとても中へは入れない。
そうしてる間も廓の中から次々と遊女や使用人達が逃げ出てくる。そのうちの一人がつまづいて廓を囲んでいるお歯黒ドブへ落ちてしまった。
辰は思わず手を差し伸べたが、首まですっぽり浸かって助けを求めるその人物はなんと辰を袖にした紅梅だった。
辰:
「おっと、誰がおまえなんか助けるか!」
そこでドブの中から首だけ出した紅梅が
紅梅:
「助けておくれよ。今度ばかりはあんたに首ったけだよ」
吉原から遊女の逃亡を防いだものは
吉原にいる遊女には借金があるので年季が明けるか、お大尽に身請けされるかするまで逃亡を監視する必要がありました。
吉原への出入り口は正面にある大門以外になく、その唯一の出入り口には各店から派遣された若い衆が詰める四郎兵衛番所(しろべえばんしょ)というものがあり、廓内の治安維持と遊女の逃亡を監視しました。
また門を通らずに廓の塀を越えて逃げられないように周囲をお歯黒どぶという堀で囲まれていたそうです。汚水が流れていて真っ黒だったのがその名の由来とか。そんなところに嵌ってしまうとかちょっとブルっとしてしまいます。
噺の中でも火事の場面が登場しますが、吉原は夜間営業だったため火事になることもままあったようです。焼け出されてしまうと仮設の建物で臨時営業するわけですが、そうなると堅いしきたりなどは省略され庶民や貧乏侍も相手にしてもらえたとのこと。江戸時代初期は完全に裕福な人の社交の場でしたが、火事は吉原の庶民化に一役買ったという説もあります。
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