落語 宿屋の敵討のあらすじ 敵討ちのルール色々
宿屋の敵討ち
宿場町の旅籠に一人旅の武士が泊まりに来た。疲れているので静かな部屋を所望するとさっそく部屋に上がった。
その後に旅籠へ到着したのが江戸っ子の三人組。彼らは大変騒がしい。三人は部屋に上がると地酒を注文し宴会が始まってしまう。
そこは運の悪いことに武士の隣の部屋。隣の部屋でドンちゃん騒ぎなどされては ゆっくり休んでいられない。武士は部屋を代えてくれないかと番頭に頼むが、あいにくその日は部屋はうまってしまっている。
番頭は三人組に静かにしてくれるように頼みに行くが文句をタラタラ
しかし「隣の部屋に泊まっているのは刀を持ったお侍様です」と聞くとおとなしく布団に入った。
三人は布団に入ったものの酒が入っているせいか馬鹿話が止まらない。夜も更けてきたというのに大笑い。
武士はまた番頭を呼んで注意しに行かせると、三人はさすがに恐縮するが、一人が「そういえば武士といえば…」
と武勇伝を語り始める。
隣の部屋の男:
「木曽路を歩いていると、すれ違った武士に因縁をつけられた。俺の荷物が刀に触れたっていうんだ。とんだ失礼をと謝ったがだめだった
ならん!といきなり斬りかかってきやがる。こっちも大人しく斬られるつもりはねえ懐剣をやぶれかぶれで振り回すとそいつの首がポ~ンと飛んだんだ。
どうだ俺の腕前は?武士なんて威張ってはいるがたいしたことねえ」
またヤンヤの大騒ぎになり、みたび番頭が武士に呼ばれるが今度はどうも様子が違う
武士:
「先ほど隣からとんでもない話が聞こえてきた。拙者は兄の仇討ちのために旅をしているのだが、隣の部屋の者が兄の仇とわかった。
宿に迷惑はかけたくないから明朝外で討取るから逃がさないようにしてくれ。逃がすようなら貴様の首も飛ぶぞ」
これは大変なことになったと三人組に知らせに行く番頭
当の本人はホラ話だと言い張るが、逃げられては番頭の首が飛んでしまうから、店の者を呼び出して三人を縛ってしまった。
ホラ話のせいで今夜限りの命か…とうなだれる三人
そして朝が来たが武士は敵討ちをするにしてはのんびりした様子
たまらず、番頭が「敵討ちはどうしますか?」と訊ねたところ
武士:
「ああ、あれはウソだ。隣の連中があまりにもうるさいからおどかしただけだ」
敵討ちのルール色々
よく時代劇などで登場する敵討ちですが、いくつかのルールがありました。
まず敵討ちに出るには藩に願い出て、許可を得て幕府の公儀御帳に記録してもらう必要がありました。これが相手を討ち果たした際に敵討ちであるという証拠となります。
これを怠るとただの私怨ということで罰せられることになります。ちなみに敵討ちされたものの敵討ちはキリがないので許可が出ません。
また認められるのは主君や肉親が不当に殺された場合に限られました。
※ただ肉親の場合は行かねば恥のような空気になり、半ば義務のようだったともいいます。
成功率はかなり低かったと思われます。相手がどこに姿を消したかわからない、情報網などが発達していない。顔も覚えていない父親の敵討ちに行かされたという記録もあります。
喧嘩両成敗で済めばいいのですが、武士も体面を保つために苦労が絶えなかったのではないでしょうか。
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