*

落語 干物箱のあらすじ 何でもお金になった江戸時代の芸。声色つかいとは?

公開日: : 最終更新日:2019/07/31 滑稽噺 , , , ,

干物箱

遊んでばかりなのを懲らしめようと、大旦那は息子の徳三郎を店の二階に軟禁してしまう。

二階に閉じこもって3日が過ぎた。徳三郎はさすがに外にも出たいし、遊びにも出かけたい。

徳三郎は「風呂に行かせてくれ」と大旦那に頼みこみ、なんとか「半刻だけ」という約束で二階から出ることを許された。




さて外に出てはみたものの、半刻だけでは本当に風呂に行って帰るだけ。遊びに行くならもう少し時間がほしい。

そこで友人の与太郎に身代わりを頼むことを思いつく。与太郎の特技は声真似で、徳三郎の声もそっくりにマネできる。

徳三郎は与太郎に小遣いを渡し、
干物箱身代わり
徳三郎:
「下から父親に話しかけられても俺の声真似でごまかしてくれ。なあに二階に俺がいることさえ確認できれば二階に上がって来ることはあるまいよ」

と言いつけると遊びに行ってしまった。

与太郎オドオドしながら徳三郎の家に入ると「ただいま戻りましたと」大旦那に一声かけ、顔を合わせることなく二階へ上がりこむ。

大旦那はこういう時に限って何かと二階へ向かって声をかけてくる。

大旦那:
「今日頂いた干物はどこにおいた?」
干物箱干物
そんなことは打ち合わせになかったので

与太郎:
「干物箱にしまっておきましたよ」

大旦那:
「干物箱なんてどこにあるんだ?ねずみに齧られるといけないから持ってきてくれないか?」

最初はごまかしていた与太郎だったが、二階へ来そうになる大旦那に向かって「風邪を引いてしまったようです」この一言がよくなかった。

大旦那が薬を持って上がってきてしまい計画はすべてばれてしまう。

そこへちょうど財布を忘れたことに気が付いた徳三郎が帰って来て

徳三郎:
「おい 与太 財布をそこから放ってくれ」
干物箱財布
外から二階へ向かって声をかける。
それを聞いた大旦那は

大旦那:
「徳三郎!おまえなんかもう帰ってこなくていい!」

徳三郎:
「さすがは与太 親父の声もそっくりだ

現代でいうモノマネ「声色」

大旦那がお座敷で飲んでいると、隣の部屋から息子の徳三郎の声が聞こえる。「また遊んでいるのか!」と隣の部屋に怒鳴り込んだところ、声の主は与太郎だった。こういう場面が入ることもあります。

声真似についてですが、娯楽の少なかった江戸時代、色々な習い事があったことは以前紹介しました。「声色(こわいろ)」と呼ばれる声帯模写を教える道場もあったそうです。

基本的には人気のある歌舞伎役者の声だけではなく、身振り手振りなどもセットで習い、芸に自身のあったものは木戸銭をとって商売にしていたとのこと。

噺に出てくる与太郎は若旦那の声限定のようですが、その気になれば何でも職業になる世の中だったようです。

落語一覧へ




関連記事

落語 家見舞(こいがめ)のあらすじ 江戸時代の水道事情について

家見舞い 日頃世話になっている兄貴分が引っ越しすることを聞いた長屋暮らしの八と熊 引っ越し祝

記事を読む

傘

落語 道灌のあらすじ 太田道灌は和歌に疎かった?

道灌 ご隠居のところへやってきた長屋の八っつあん。今日も馬鹿話をしている。そのうち絵の話になり

記事を読む

落語 提灯屋のあらすじ オチの意味と噺の中の紋について

提灯屋 チンドン屋から提灯屋のチラシを受け取る長屋の若い衆 字ばかりのチラシで気になって

記事を読む

落語 天災のあらすじ

天災 どんな些細なことにも噛み付く怒りっぽいことで有名な熊五郎 今日も女房と喧嘩をしたよ

記事を読む

居残り佐平次

落語 居残り佐平次のあらすじ サゲオチのおこわにかけるとゴマ塩だからの関係は?

居残り佐平治 遊び人の佐平次が仲間に品川の遊郭に繰り出して派手にやろうと提案する。 佐平次:

記事を読む

落語 長短のあらすじ 江戸時代の煙草と喫煙率について

長短 長助と短七の二人は仲のいい友達なのだが性格は正反対。長助は昔からのんびり屋で気が長く、短七は

記事を読む

花魁

落語 お見立てのあらすじ オチの解説 サゲのお見立てくださいの意味は?

おみたて 花魁の喜瀬川のもとへ田舎者のお大尽 木兵衛(もくべえ)が尋ねてくる 喜瀬川は「

記事を読む

力士

落語 花筏(はないかだ)のあらすじ なぜ横綱ではないのか?

花筏 ある日 提灯屋の主人の元に相撲部屋の親方が訪ねてくる 提灯の注文だと思った主人だっ

記事を読む

落語 片棒

落語 片棒のあらすじ

片棒 けちが服を着て歩いているとケチで有名な赤西屋の大旦那。人呼んで赤西屋ケチ兵衛。 若いこ

記事を読む

落語 松山鏡のあらすじ 死んだ人に会うにはどうする?

松山鏡 松山村に住む正直なことで評判な正助 その評判は殿様の耳に入り 殿様はぜひ会いたい

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

落語 野ざらしのあらすじ オチの馬の骨だったか!の意味とは?

野ざらし 長屋の八五郎が隣に住む先生の元をたずねる。 昨晩

落語 化け物使いのあらすじ 驚愕の奉公人の年間休日数とは?

化け物使い 人使いの荒いことで有名なあるご隠居 朝から晩まで働

馬
落語 付き馬のあらすじ オチの馬に行けとは?遊郭での勘定のルール

付き馬 吉原遊郭のある店に金持ち風の男がと登楼してくる。その晩

落語 黄金餅のあらすじ 西念が飲み込んだ金について

黄金餅 ケチ坊主の西念が病で寝込んでいると聞いて隣に住む金兵衛が

金蔵
落語 味噌蔵のあらすじ 防火対策の目塗りとは?

味噌蔵 ケチで有名な商屋の旦那の奥さんに男の子が生まれたというと

→もっと見る

PAGE TOP ↑