落語 猫の災難
酒は飲みたいが買う金はない そんな八五郎のところへ猫が鯛の頭をくわえてやってきた。猫に恨みはないが条件反射で。
八五郎:
「こら!この泥棒猫め!」
怒鳴りつけると猫は鯛の頭を落として逃げていく
それを見て八五郎は一計を案じる。鯛の頭だけ見えるようにして布を掛け、まるで鯛が一尾丸ごとあるように見せかけた。
ちょうどそこへ熊五郎がやってきたので。
八五郎:
「熊 ちょうどいいところへ来た。こいつで一杯やってかないか?」
熊五郎:
「立派な鯛だな。じゃあ俺は酒を買ってくる」
と中身を確かめもしないで走っていく。これで酒が飲めるとほくそ笑む八五郎
だがこのままでは鯛が頭だけだということがバレてしまう。そこで一芝居。
熊五郎が酒を買ってくる帰ってくるタイミングを見計らい、庭の隅に逃げた先ほどの猫に向かって
八五郎:
「この泥棒猫め!熊すまねえ 俺がちょっと目を話した隙にこの通り…」
猫に身の方を食べられたんだと 残った鯛の頭を見せると
熊五郎:
「仕方ねえ 酒があるのに肴がないのはさびしいから」
と買ってきた酒を置いて再び出かける熊五郎。
八五郎:
「うまく酒が手に入った。どれ一杯味見だ!うまい」
熊五郎がなかなか帰って来ないのでもう一杯、もう一杯で徳利はとうとう空っぽに…
弱った八五郎はまた一芝居。酒の徳利を割って熊五郎が帰って来るのを待つ
八五郎:
「またあの猫にやられた!燗をつけようと用意していると、今度は鯛の頭を狙ってあいつがやってきた。追っぱらおうとしたところで、徳利を足にひっかけてガシャンだ…」
熊五郎:
「それにしては酒はこぼれてないし、おまえさんの顔も真っ赤だが?」
八五郎:
「こぼれた酒をもったいないから吸い込んだんだ」
熊五郎:
「まあいい。もう一度酒を買ってくるよ」
またまたうまくごまかした八五郎
そこへ件の猫が入ってくると、仏壇の前にちょこんと座って前足を合わせた
八五郎が不思議に思っていると
猫:
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…もうこれ以上災難が降りかかりませんように」