落語 元犬
人間になりたくて蔵前の八幡様に願をかけ始めた白犬のシロ
願掛けをはじめて21日目の満願の日 突然不思議な風が吹いた。
風はシロの毛をすべて吹き飛ばしてしまい 気が付くといつの間にか犬から人間の姿に
念願かなったはいいが毛が抜けてしまったものだから真っ裸。寒くて困っているところに いつもかわいがってくれていた口入屋の主人が通りかかる
※口入屋=現代でいうところの派遣会社
シロ:
「御主人お久しぶりです。私シロです。わかりますか?」
口入屋:
「四郎さん?わからないなぁ…」
「まあそんな恰好じゃあ寒いでしょう」と着物を手渡されると、初めてなので着物を上手く着られないし、下駄は両手両足に履いてしまう始末
「行き先がない」という話をするシロ それを聞いた口入屋の主人はちょうど男手を探しているご隠居がいるから「そこで世話になってみては?」と勧めてくる
実は件のご隠居は変わった人が好きで シロはうってつけと思ったからだ。さっそく口入屋にご隠居の元へ連れて行ってもらい、一通り紹介してもらうシロ
ご隠居:
「よく来てくれたね。うちにはモトという女中がいるから わからないことがあれば聞くといい。気立てのいい子だから親切に教えてくれるよ。ところであなたのお生まれは?」
シロ:
「はい 裏長屋の八百屋と魚屋の間で生まれました」
ご隠居:
「そこはごみ溜めだが…なるほど謙虚なんだね。ご家族はいらっしゃるかな?」
シロ:
「両親はいません。兄弟が何匹かいましたが今は別れ別れです」
ご隠居:
「そうか天涯孤独か…それにしても何匹とは変わっているね」
ご隠居はさっそく掃除や用事をいいつけるが、シロはやったことのないことばかりなのでトンチンカンな結果になってしまう
ご隠居:
「やかんがチンチンいってるから、下してくれないか?」
シロ:
「チンチンは苦手なんですけどねえ…あ!今は人間の足だから簡単か!はいチンチン」
と背筋を伸ばし 両手を胸の前で持ってきてチンチンのポーズ
だんだん手に負えなくなってきたご隠居は女中のモトを呼ぶ
ご隠居:
「モト~モトやモトはいぬか?」
シロ:
「はい!今朝人間になりました」
落語 元犬オチと方言について
落語 元犬について
オチの部分はご隠居の「(女中の)モトは居ぬか?」をシロが「元は犬か?」聞いて「はい今朝人間になりました」と受けたダジャレオチ
ちなみに私は尾張地方の出身なので”やかんがチンチン”と聞いて「あ、やかんが沸騰してるんだな」ということはわかりましたが、熱いことをチンチンというのが方言ということに結構最近気がつきました(^^;
よく考えると都会の街中で使用すると怪しい言葉ですね笑
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