落語 妾馬(めかうま)
ある日 長屋の大家さんのところに身なりのいい武士が訪ねてくる。
先ほど殿様が駕籠で通りがかった際、この近辺で見かけた娘を気に入り屋敷へ奉公にあげたいというのだ。
屋敷へ奉公へ上がると言うのはゆくゆくは殿様の側室になるということ。つまりは玉の輿で大出世。
その娘と言うのは八五郎の妹の鶴。 大家さんは八五郎の素行が悪いので心配だったが、話は進み三百両の支度金と老母への手当てが支給され屋敷に上がることに。
月日が過ぎやがて鶴はご懐妊、生まれたのが元気な男の子 世継ぎを生まれたことを皆が大変喜んだ。
そのタイミングで鶴はいつまでもフラフラしている兄の八五郎のことを心配して殿様に兄に会いたいと願い出る。
今度は八五郎が屋敷に来るようにと使いが来たものだから、心配なのはまたしても大家さん。
「鶴が赤ん坊をヒリ出したのかい?そいつはめでてえ」と普段着でフラりと屋敷に行こうとする八五郎を引き止めて、湯や髪結いに行かせ、紋付袴に履物フンドシの用意まで面倒を見る。
大家:
「あとは言葉遣いだ 頭に"お" 尻尾に"奉る"を付ければなんとかなるから」
屋敷に着いた八五郎だったが、場違いなことこの上ない
家臣や殿様の言っていることがわからないし、八五郎も何を言うにも頭に"お"や語尾に"奉る"を付けて話すものだから あちらも何を言っているのかわからない
殿様:
「そちが何を申しておるのか 余にはわからん」
八五郎:
「へえ 自分でも何を言ってるかわからねえんで」
結局無礼講でよいということになり、酒が入るといつものガサツな振る舞いになる
それを見た家臣がたしなめようとするが、その度に殿様が「無礼講じゃ」と制すると ドンドン調子に乗ってくる八五郎
殿様にも家臣にも乱暴な言葉で話しまくる。
八五郎:
「殿様と俺は兄弟分だから困ったことがあったら力になるぜ」
そのうち殿様の近くに控えている鶴に話しはじめる
八五郎:
「お袋が初孫喜んでたぜ ただ住む世界が違うと孫の顔も見られねえって…殿様鶴を大事にしてやってください…」
しんみりしたところで突然 都都逸を披露する八五郎
殿様:
「面白いやつじゃ 召抱えてつかわせ」
と八五郎武士に取り立てられる。
八五郎出世の話
落語 妾馬町娘が殿様の目に留まることは実際あった?
落語 妾馬(めかうま)の解説
士農工商 身分制度が厳しいイメージの江戸時代 いきなり町人の娘が殿様の目に留まり玉の輿に…
落語や時代劇ならではのフィクションのようにも思われますが、実は以外とそういうことはあった模様です。
二代将軍 秀忠の側室で男子を産んだお静の方の父親は農民であるとも大工であるとも言われていますし
春日の局は男色傾向にあった三代将軍家光のために江戸市中に家光の気に入りそうな娘を見つけると召し出していたとのこと。
家光の四男 で五代将軍綱吉の生母(桂昌院)は元は八百屋の娘だったと言われています。
将軍家でこのような感じだったので一般の大名家では珍しい出来事ではなかったと思われます。
ちなみに余談ですが、「士農工商」という身分制度 20世紀生まれの私は当たり前のように日本史の時間に習いましたが、今の教科書には載っていないもよう。なんと中国の書物で広く一般民衆を指した言葉だったようで、教科書から消えたそうです。
ああ昭和は遠くなりにけり…
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