落語 饅頭怖い
今日も長屋の若い者たちが集まって馬鹿話に花を咲かせていると一人血相を変えて飛び込んでくるものがいる。
なんでも路地で蛇を見かけ、怖くて死に物狂いで逃げてきたという
「俺は蛇どころか長いものを見るとゾッとするんだ。蕎麦もうどんもダメ。褌だってしめねえよ」
それをきっかけにそれぞれの苦手な物の話になる
「蛙がきらい」
「蜘蛛がきらい」
「トカゲ」
「蟻」
「馬」
みんながそれぞれ苦手な物をあげていったが、そこまで黙っていた松公が口を開いた。
松公:
「男がこんなに集まって情けねえこった。蛇なんて鉢巻にしたらちょうどいい長さじゃねえか。蜘蛛なんて食ってやらあ」
などと威勢のいいことを言い始めた。
男:
「それでもおまえにだって一つくらい苦手なもんくらいあるだろう?」
松公:
「ねえったらねえ…だがおまえらがしつこいから 一つだけ思い出しちまった。実は饅頭が怖い」
そう打ち明けた
それを聞いた男たちは大笑い。いろいろな饅頭の話をしていると、みるみる松公の顔色が変わってきて
松公:
「ちょっと気分が悪くなってきたから隣の部屋で横にならせてもらうぜ」
と告げると布団をかぶって寝てしまった
男:
「こいつは面白いことを聞いた。さっきは俺たちのことをよくも馬鹿にしてくれたな」
結局みんなで饅頭を松公の枕元に並べてやろうということで話がまとまり、大量の饅頭を用意して松公を起こす
男:
「おい起きろ松公 おい」
枕もとの饅頭を見た松公はびっくりして飛び上がり、それを見たみんなは大喜び
だが松公は並んだ饅頭を「怖い怖い」と言いながら次々に食べ始めた
松公:
「ああ怖い怖い…」
男:
「ああ、こいつ美味そうに饅頭を食ってやがるぞ。しまったこれは一杯食わされたか…一体おまえは何が怖いんだ?」
松公:
「今度は熱いお茶が怖い」