落語 質屋蔵
伊勢屋の質草を預かる蔵に怪奇現象が起こるという噂が立つ。本当かどうかわからないが 放っておいては店の信用にかかわると大旦那は番頭を呼び出した。
怪奇現象は夜中に起こるそうなので番頭に見張りをさせるためだ。しかし番頭は怖がりで「一人では無理ですが、熊五郎と一緒ならなんとか…」と言う要望に呼び出される熊五郎
熊五郎は旦那に呼び出された理由を酒を失敬したり、料理をつまみ食いしたことがバレたのだと勘違いしており、結局それに目をつぶるということで番頭と一緒に蔵の見張りをすることとなった
熊五郎は立派な彫り物をしていて威勢はよいが どうも幽霊の類には弱い様子
頼りない二人組で怪異の正体を見届けることとなった。
二人ともガタガタ振るえながら番をしているとだんだんと夜も更けて むかえた丑三つ時(午前2時頃)
蔵の奥の方でなにやら物音がする。恐る恐る二人が近づいてみると質草として預かった品物たちが相撲を取っている
熊:
「番頭さん ありゃなんですか?」
番頭:
「おそらく質草たちに気が残ったんだ」
怖いというより呆気に取られていると 今度は棚の上の掛け軸が独りでに開く。同じ町内の藤原さんが質草として預けた天神様(菅原道真公)の掛け軸だ
気が残った掛け軸はいきなり話し始める
道真公の掛け軸:
「東風吹かば~匂い起こせよ梅の花~主なしとて春な忘れそ~」
大宰府に左遷される際の有名な歌を詠み上げると 二人の方をじっと見る掛け軸の中の道真公
道真公の掛け軸:
「これ番頭 藤原方に利上げせよと伝えよ。このままでは
また流されてしまう…」
落語 質屋蔵オチの流されてしまうについて
落語 質屋蔵について
今と変わりませんが質屋は預けた商品(質草といいます)の価値に応じたお金を貸してくれていました。質草は期限が過ぎると質屋のものとなってしまいます。(流れるといいます)
期限までに利息込みの金額を支払って質草を返してもらうか、利息分だけを支払って期限を延長し質草が流されるのを防ぐのを利上げといいます。
オチはつまり
藤原さん=道真公が左遷される原因を作った藤原時平
流されてしまう=大宰府に流されたことと掛けている
ということになります。
借金の種類としては質草と言う担保があるので返済日に取り立て屋がくるようなこともなく、安全なお金の借り方ではあったようです。
ただ現在の利息よりも江戸時代の方が格段に高く、現代の質屋の利息が年利0.95~1.5%に対して、江戸時代は貸付金100文につき年利36%
※ちなみに消費者金融が利息制限法の上限金利で15%~20%
こんな暴利で商売してたら蔵なんてたくさん建ったでしょうね^_^;