落語 野ざらし
長屋の八五郎が隣に住む先生の元をたずねる。
昨晩先生と一緒にいた女は誰なのか?話し声が気になって眠れなかったと文句を言いに来たのだ。
あれを見られてしまったのだったら仕方がないと先生は女と一緒にいた理由を語りはじめる。
先生:
「昨日は向島へ釣りに行ったが 一匹もかからないまま日が暮れてしまった。
こういう日もあるだろうと帰り支度をはじめると、浅草寺の鐘の音がボ~ンと響く。
その時葦の原からガサガサっと!」
怖くて逃げ出そうとした八五郎だったがガサガサっと出てきたのはカラス
驚く八五郎を横目に先生は話を続ける
先生:
「カラスのいた辺りをふと見てみると、そこには野ざらしになっている骨が落ちている。
気の毒に思って手向けに酒をかけ、短い経文を読んで冥福を祈った。
すると不思議なことに骨にポッと赤みがさしたように感じた。
その場を去り家に帰って夜中のことだ、向島から参りましたと女が訪ねてきた。
先ほどの礼に参ったと言うわけだ。そして後はお前さんが聞いた通りだ」
八五郎:
「なんと昨晩の女は幽霊ですか?あんないい女なら幽霊でもいい。俺も釣りに行ってこよう」
先生の釣りざおを勝手に持って行ってしまう八五郎
向島に着くとまだ日が明るいこともあって、釣り人で賑わっている
八五郎ははなから魚を釣ることには興味はないから 大声で独り言を言ったり、釣竿で川の水をかき回したり周りに迷惑をかけ放題
とりあえず気分を出そうと竿を投げるが、振り回しながら川へ投げるもんだから、針が鼻に引っかかってしまう
八五郎:
「痛て痛て 忌々しい針め!こんなもんが付いてるから痛い目に遭うんだ」
釣り人:
「おいおい あの人自分で自分を釣って針をとってしまったぞ」
しばらくそんなことをしていると 人は少なくなり辺りも薄暗くなってくる
ボ~ン ボ~ン
やがて浅草寺の鐘の音が聞こえてくる
八五郎:
「待ってました!骨はどこだ?」
辺りを探すと葦の原の中にちょうどいい骨を見つける
さっそく酒をかけ 出鱈目なお経を唱えて供養の真似事をする八五郎
念のため家を間違えないようにと骨に自分の家の住所まで言い聞かせて家路に着いた
それを偶然聞いていたのが新朝(しんちょう)という幇間(たいこもち)
あの旦那 これから女と一杯やるならこれに便乗してご祝儀をもらおうと、先ほど聞いた八五郎の家を訪ねる
新朝:
「こんばんわ~」
八五郎:
「早いなもう来たか」
八五郎が扉を開けると見たこともない男が立っている
新朝:
「旦那 お初です。新朝(しんちょう)という幇間(たいこ)です」
八五郎:
「なに?新町の太鼓?しまったあれは馬の骨だったか…」
落語 野ざらしオチの馬の骨だったか!の意味
落語 野ざらしの解説
分かりにくいので途中での針をとってしまうところで下げることも多いです。
落ちについて解説すると
太鼓には馬の皮が貼られていました。そして浅草の新町(しんちょう)には太鼓屋がたくさんあります。(聞く側がこれを知っていることが前提です)
たいこもちの新朝に「新朝(しんちょう)という幇間(たいこ)です」と言われ
※幇間持ち(たいこもち)=宴会や酒の席を盛り上げるのが生業の芸者の男版
八五郎は「新町の太鼓」と脳内変換して 馬(の皮)を連想。新町で太鼓の材料にされた馬の骨が落ちてたんだなと解釈。
骨の正体は女ではなく馬だったかというオチにつながったというもの。
現代ではわかりにくいので、噺の冒頭であらかじめ説明を入れたり、八五郎が針をとってしまうところで終わることも多いです。