落語 万金丹のあらすじ 江戸時代の薬について
万金丹
旅の途中で路銀が尽きて行き倒れ一歩手前の辰五郎と梅吉
道に迷い「こんな知らないところで野宿か」と困っているところに 天の助けかお寺を見つける
寺の門をたたくと今晩は泊めてもらえることに。いやあ助かったとその晩はゆっくり休むが、二人は路銀がないものだから二日三日と居ついてしまい なかなか出発する気配がない。
さすがに和尚が催促すると、二人は「路銀を使い果たして退くも進むもできないのでしばらくお世話になれないか」と和尚に相談すると
和尚から「ならば いっそのこと出家してみないか?」と言う提案
「食いっぱぐれもないし坊主もいいかもな」とさっそく髪を落として坊主になる二人
辰坊と梅坊という法名をもらうと翌日から寺での生活が始まった
お寺での生活は朝晩お経三昧 暇があれば境内をそうじし、食事も質素で酒も飲めない
こんな生活が長く続くわけがない。二人が「寺のものをかっぱらって逃げようか」と相談していると
和尚:
「本山へ用事が出来たので留守を頼む。弔いが出たら山の向こうのお寺に頼むように」
といいつけて和尚は一月ほど寺を空けることに
留守を任された二人は今まで我慢していた鬱憤を晴らすかのように 池の鯉は食べるわ酒は飲むわのドンちゃん騒ぎ
「路銀さえあればこんなところおさらばなんだがな」とくだをまいていると そこへ葬式の依頼が入る
檀家:
「麓の村の万屋金兵衛(よろずやきんべえ)が亡くなりましたのでお弔いをお願いします」
弔いが出たら山の向こうのお寺に頼むように言われていたが、これで旅の路銀ができると踏んだ二人は
江戸から来たえらい僧侶の振りをして、葬式の場へ現れる。神妙な顔をして出鱈目なお経を上げ木魚を叩き
辰坊:
「これで万屋金兵衛は無事に仏と成ったであろう」
檀家:
「ありがとうございます。ところで戒名は?」
二人は戒名のことまで考えてなかったが、梅坊が和尚の部屋に落ちていた薬の袋を差し出した
「伊勢浅間霊法万金丹」
漢字で何やら書いてあるので戒名に見えなくはない。「袋になっているのは特別だ」とごまかした。
檀家:
「伊勢浅間霊法万金丹…戒名の意味を教えてください」
梅坊:
「伊勢浅間は生きているうちは威勢がいいが死ぬと浅ましい
霊法は法礼 つまり読経料のことだ しっかり頼むぞ
万金は万屋金兵衛 丹は年寄りは喉にタンが絡んでまいるってことだ」
檀家:
「金兵衛はタンではなく茶席で餅が喉につっかえて死んだんですが…」
梅坊:
「だったら餅が喉につっかえタン 万金丹だ」
檀家:
「ただし白湯にて用ゆべしと裏側にあるのは?」
梅坊:
「仏はお茶に懲りてるから仏前には白湯を供えてくれってことだ」
万金丹他 江戸時代の薬について
江戸時代 薬種問屋という今で言う薬局が日本橋に軒を連ね、様々な薬が出回っていました。
まともな医者にかかろうとすると高価なのと薬が比較的安価で手に入ったためと思われます。
また 口コミでよく効く薬だと評判になれば爆発的に売れたそうです。
長崎で有名だった胃腸薬「ウユルス」や安中(群馬)の天然痘の予防薬「疱瘡預薬消毒百祥湯」は江戸でも大変需要がありました。(ただ宣伝が上手だったとも考えられますが…)
他には新撰組の土方歳三が売り歩いていたと言う石田散薬。打撲や切り傷によく効いたといいますが、作り方が牛革草という草を土用の丑の日に刈り取って黒焼きにする。酒と一緒に飲まないと効果がない。河童明神のお告げによって土方家の先祖が作り始めた。など怪しげです。
江戸時代の薬の主成分は漢方や民間療法のようなものが主で科学的根拠があったかどうかは今となっては闇の中です。
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