落語 長短
長助と短七の二人は仲のいい友達なのだが性格は正反対。長助は昔からのんびり屋で気が長く、短七は生まれた時から気が短い
ある日、のんびり屋の長助が短七の家に遊びに来る。
長助は今日も相変わらずのんびりで「お~い きたよ~」という挨拶から家に入ってくるまでが実に長い
それを見て今日も短七はいつものようにイライラ
短七:
「おい 今日はお前が来ると思って饅頭を用意しといたんだ。さっさと食いな どうだ美味いだろう?」
長助:
「まだ持ってもないよ」
ゆっくりとした動作で饅頭を食べ始める長助
短七:
「あ~イライラするなあ 饅頭はこうやって食うんだよ」
と長助の持っている饅頭をパッと奪い取るとそのままパクり
今度は長助がタバコを吸おうとするが、のんびりとした動作で火をつけようとしているせいでまったく火がつかない
イライラが頂点に達した短七さんは長さんに手本を見せようとする
短七:
「江戸っ子のタバコの吸い方を教えてやらあ よく見てな 勢いよく口から迎えに行って 吸ったらポーンとはたくんだ」
だが短七の動きは長助にとっては早すぎてなかなか目で追うことができない。
…と何度もタバコの吸い方をやって見せているうちにポーンとはたいたタバコの火玉が短七の左手のそでの中へ
それを見た長助が
長助:
「短さんおまえさんは人にものを教わるのは嫌いかい?」
短七:
「そんなことねえよ」
長助:
「じゃあ俺が何を言っても怒らないかい?」
短七:
「ああ、怒らないよ」
長助:
「どうしようかな~」
短七:
「グズグズしねえで早く言えよ!」
長さん:
「さっきタバコ盆に捨てるはずの火が短七さんのそでに入ったみたいだ。大丈夫かなあ…と思っていたら煙が出てきて
今だいぶ燃え出したようだけど、ひょっとしたら…消したほうがいいのかなあ?」
短七:
「なんだって?アチチ!バカ早く教えねえか!」
長助:
「ほうら怒った…やっぱり教えねえほうがよかった」
落語 長短江戸時代の喫煙について
この噺のタバコの火が袖に飛び込むくだりは、中国宋の時代の「性緩」という噺が元になっています。正反対の二人ですが不思議と気が合うというのは割とありそうです。
タバコは現代とは違って、お客さんが来ると「どうぞ一服」と勧められることも珍しくなかったようです。文化文政期になると喫煙率も高くなり、子供が吸っても咎める法律自体はありませんでした。
※未成年の喫煙が禁止されたのは明治後半になってから
落語 長短余談噺の中の短七の吸い方
「勢いよく口から迎えに行って吸ったらポーンとはたくんだ」
解説すると この頃のタバコは紙巻ではなく煙管(キセル)を使って吸います。
1.まずは刻みタバコを丸めて煙管の先っぽに詰めます
2.煙管の先に火種を近づけます
3.吸い込みながら着火
4.二,三口吸い込んだら煙草盆へポーンと灰を落とします
(チェーンスモーカーの人は手順を繰り返し)
紙巻と違ってあっという間に灰になってしまいますし、ライターもないので煙草を吸うのも一苦労です。それだけに粋にかっこよく吸うのが江戸っ子の嗜みだったのかもしれません。