人情噺

落語 芝浜のあらすじ 江戸時代財布をネコババしたら

落語 芝浜

腕前はいいのだけど、酒ばかり飲んで何日も仕事に行っていない魚屋の勝五郎

女房は暮れも押し迫って正月を迎える金もないからと朝から勝五郎をたたき起こし、家を追い出して仕事に行かせた。

しかし芝の河岸に着くとまだ誰もいない。すると時を知らせる鐘が聴こえてきた。どうやら女房に一刻(二時間ほど)早く起こされたらしい。

しかたがないので浜辺で顔を洗ったりしていると、波打ち際に革の財布を見つける。

中を見てみると小判がザクザク五十両。勝五郎は慌ててそれを懐に入れると急いで家に戻ってきた。
芝浜小判
女房:
「おまえさん早いね。仕事はどうしたの」
勝五郎:
「そんなもん、もうやめだこの金があれば働かなくても楽が出来る祝い酒と行こうじゃねえか」
と長屋の飲み仲間を呼んでドンちゃん騒ぎ、そのまま酔いつぶれて寝てしまった。

あくる朝、女房に
女房:
「おまえさん仕事に行っておくれよ」
勝五郎:
「なに言ってんだ?昨日の五十両があるだろう?」
女房:
「五十両って何さ?しょうがないねえ、夢でもみたんだね」

金を拾った夢を見るなんて情けねえ、唖然とする勝五郎、それからは酒をやめ身を粉にして働くようになった。元々腕はいい勝五郎、3年経つ頃には、小さいながらも表通りに店を構えるまでになる。

そして大晦日のこと
芝浜除夜の鐘
女房:
「ねえ、おまえさん、ちょっと話があるんだけど、私の話が終わるまで怒らないで聞いてくれるかい?」
勝五郎
「なんだい改まって。なんだかわからないが約束しようじゃないか」
そこで女房は3年前の五十両の件を切り出した。

五十両、本当に拾ってきたと。大家さんに相談したら勝五郎のためにならないから夢だということにしてごまかせという助言に従ったこと。

五十両は落とし主が見つからなかったので、こちらに戻ってきたがそれを言うと真面目に働きだした勝五郎が元に戻ってしまうのではないかと思い言い出せなかったこと。

聞き終わって最初は怒った勝五郎だったが、女房の心遣いに感謝の言葉を口にする。喜んだ女房は3年ぶりに「好きなお酒を飲んでほしい」と勝五郎にすすめるが、勝五郎は杯を口まで持っていくと

勝五郎:
「やめとこう。また夢になるといけねえ」

落語 芝浜勝五郎の商売について

芝浜魚
勝五郎が表通りに店を構えるまでは天秤棒の両端に商品を下げて売り歩く棒手振り(ぼてふり)という形態で魚を売り歩いていたと思われます。

魚に限らず棒手振りのような行商人の扱う品物は草履、野菜、油など多種多様で地方から出てきて、元手の少ない人間が始めるにはもっとも簡単にはじめられる商売でした。

3年で表通りに店を構えられたということは勝五郎の魚の目利きや包丁の腕前は確かだったといえそうです。

落語 芝浜余談勝五郎が拾った財布について

江戸時代、落し物を拾ったら拾った人がまずその周辺に拾ったことを記した立て札を立て、落とし主が現れなければ町奉行に届け、奉行所でそれを公開することになっていました。

落とし主が現れると拾った人に報労金が支払われるのは現代と変わりませんでしたが現代の約一割と比べると江戸時代の比率は非常に高く50パーセントだったといわれます。

落とし主が現れなければ半年で拾った人のものになり、それは現代とそれほど変わりませんでした

ちなみにネコババすると現代では遺失物横領罪で「一年以下の懲役、または十万円以下の罰金、もしくは科料」となりますが、江戸時代では十両盗めば死刑と決まっていたので、窃盗ではないとはいえ定吉の妻の言う「首が飛ぶ」というのも大げさな話ではなかったといえそうです。

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