落語 小言幸兵衛
小言ばかり言っているのでみんなから"小言幸兵衛"とあだ名を付けられている長屋の大家の幸兵衛
家を貸すのが仕事のくせに家を借りたいという人が現れても小言ばかり
そのせいで長屋はいつでも空き部屋がある
その幸兵衛のところへ今日も入居希望者がやってきた
幸兵衛:
「職業は?家族構成は?」
根掘り葉掘り聞く幸兵衛
相手が少しでも気に入らない返事をすると、たちまち「口の利き方がなってない」と小言の嵐、相手はさんざん悪態をついて去って行った。
それと入れ替わりにやってきたのは礼儀正しい男
男の職業は仕立て屋で最初は機嫌よく対応した幸兵衛だったが
仕立て屋がうっかり言ってしまった「倅は腕のいい職人で美男子です」という言葉から様子が変わる
幸兵衛:
「腕がよくて美男子、それでいて独り身とはどうも困ったねえ、この長屋に心中が起こるんだよ」
仕立て屋には理由がさっぱりわからない
そこで幸兵衛が説明を始める。
幸兵衛:
「同じ長屋に19歳の古着屋の娘が住んでいて大変器量が良い。腕がよくて美男子しかも独り身の男がこれをほうっておくわけがない。
あんたの息子は古着屋のいない間に勝手に家に上がりこむだろう。通っているうちに 二人の間に子供ができてしまい、結婚するしないの話になる。
すると古着屋は一人娘。あんたの息子を養子にくれと言うがいいのかい?」
仕立て屋:
「こちらも一人息子の跡取りですので」
幸兵衛:
「だろう?そこで両家で大揉めになる。板ばさみになった二人は心中してしまう。こうなったのもおまえさんのせいだ」
とんでもない説明に仕立て屋も逃げるように帰ってしまう。
続いて三人目の男がやってくる。この男はやけに威勢がいい
男:
「おう、邪魔するよ。あんたが大家か?俺はここに住むことにしたからな。しかし狭い長屋だな 昼過ぎには越してくるからな うるせえガタガタいうない」
幸兵衛はたじたじになりながらも
幸兵衛:
「なんて乱暴な ところでおまえさんの職業は?」
男:
「ん?俺は鉄砲鍛冶屋だ」
幸兵衛:
「そうかどうりでポンポンいい通しだ」
落語 小言幸兵衛 オチと江戸時代の大家の仕事について
落語 小言幸兵衛について。
最後は職業鉄砲鍛冶の男が鉄砲を連続で発射する音と一方的に話し続ける様子をオチにしたもの。
現代では大家というと借家のオーナーを連想しますが、落語によく登場する江戸時代の大家は、地主とか家持(いえもち)と呼ばれる長屋の所有者に雇われた管理人を指します。
役割には家賃を集めるだけではなく、戸籍の管理、お触れの店子への通達、防犯などがありました。
通常、大家は長屋の一部屋を無料で借りて住んでおり、近くに住んで住人を見張るといった意味もあったようです。
噺に登場する大家の幸兵衛は入居希望者の職業や家族構成を気にしますが、長屋の住人から犯罪者が出ると責任を問われ連座にされることもあったため選定も重要な仕事でした。
噺は脚色されているにしても身元確認は慎重にならざるを得ないという一面もあったのではないでしょうか。