落語 付き馬
吉原のある店に金持ち風の男がと登楼してくる。その晩 男は芸者や幇間入り乱れてのドンちゃん騒ぎ
翌朝 店の若い衆が勘定書を持って行くと男は「昨晩は久しぶりに楽しかった これからも贔屓にしてやるぞ」と上機嫌
高額の勘定書を見ても「ずいぶん安いますます気に入った」
ところが男はお金を払う段になると、「散歩中にフラリと立ち寄ったせいで 大きいの(金)がない」と言い出す
すぐに払ってもらえると思っていたのに勘定が取れず困惑する若い衆にこんな提案をする
男:
「両国におじさんが住んでいるから一緒に来てくれないか?」
またまた困惑する若い衆だが
男:
「忙しいところ来てもらうんだ 多少のお礼はさせてもらうから付き合ってくれ」
男に丸め込まれる形で付き馬として店を出る若い衆。心配する若い衆を横目に男は道中で 「朝風呂に行こう」、「鰻で一杯やろう」
その度に若い衆に代金を立て替えさせる だんだん不審に思えてきたところで
男:
「あそこが伯父さんの家だよ」
男が指差したのは早桶屋(棺桶屋)
男:
「伯父さんと話を付けてくるからここで待っていてくれないか?」
男はそういい残すと早桶屋の中へ そこの店主に大声で話し始める 外で待っている若い衆にも聞こえるくらいの大声で
男:
「おじさん!お願いがあります!」
あとは聞こえないようなボソボソした声で
男:
「あそこにいる男の兄貴が昨夜死にまして…」
店主に特注の棺桶を注文すると再び大声で
男:
「引き受けてくれますか!ありがとうございます!」
若い衆は聞こえてくる声を聞いて 「話がまとまったらしい」と一安心
「後はおじさんがなんとかしてくれるそうだから私はこれで」と立ち去ってしまう男
残された若い衆と早桶屋の主人は
主人:
「昨夜のことなんだって?たいへんだったねえ」
若い衆:
「急なことでしたのでてんやわんやでした」
主人:
「さびしかったろう?」
若い衆:
「でも いつかお会いできると思いますよ」
お互い別のことを考えているのになんとなく会話が成立してしまう
しばらく話していると「さあ出来たぞ」と店の奥から大きな棺おけが運ばれてくる
もちろん注文した覚えがないので「いらない」という若い衆 ここへ来た顛末を早桶屋の主人に話すと
主人:
「ああ それは騙されたんだ 気の毒だがこんな特注品どうしようもないから引き取ってもらうぞ!」
男に散々立替をさせられてお金を持っていないというと
主人:
「なんだと?おい誰か中(吉原)まで馬に行け!」
落語付き馬オチの馬に行けの意味とは?
落語付き馬のオチの解説
まず付き馬とは(主に遊郭で)お金が足りない客の家に同行してお金を取り立てに行く店員またはその行為のこと。
付き馬に出たはずの店員が客に言葉巧みに騙されて、逆に付き馬を連れて店に帰らされるという意味のオチ
規格外の棺桶を特注で作らせて時間を稼いでいる間に本人はドロン。勘定を踏み倒したというわけです。
元々付き馬は馬子(馬を引いて人や荷物を運ぶ人足)が副業でやっていたのが語源と言われています。
付き馬がついてくる場合もあれば、ひどい時は軟禁されることもあったようです。居残り佐平治はこのパターン
家までついてこられたり、軟禁されると外で遊んでいたのが家族にバレてしまうのでご勘弁願いたいところですね笑