落語 片棒
けちが服を着て歩いているとケチで有名な赤西屋の大旦那。人呼んで赤西屋ケチ兵衛。
若いころから爪に火をともして築いた身代を いつかは息子たちに譲らないといけないが、お金を無駄な事に使いやしないか心配でならない。
そこで息子三人の金銭感覚を試すために、自分の葬式をどのようにやってくれるのか聞いてみることにした。
まずは長男を呼び出すと
大旦那:
「私が死んだ後、どんな葬式を出してくれるんだ?」
すると長男は
長男:
「たくさん弔問客を呼び 料理をふるまいます。お帰りになる際はお車賃もお出ししますのでご安心ください」
商人としては一見立派だが大旦那はお金がかかることが気に入らない。
次に次男に聞いてみると
次男:
「それはもう後世に語り継がれるように盛大に行いますよ。お坊さんは大勢呼びますし※野辺送りの際には神輿を出して大行列。火屋についたら最後のお別れに景気よく花火を打ち上げます。
お!あがったあがった!あかにしや~ といった具合です」
こいつにはとても身代は譲れないなと、最後に三男を呼び出した。
三男は大旦那に似て実にケチ
三男:
「午後からの葬式といっておいて、実は午前中にすませてしまいます。そうすれば皆香典だけ置いて帰るでしょう。これで料理を用意しなくてすむ。
棺桶なんて燃やしてしまうものにお金をかけるなんてもったいないから漬物樽で我慢してください。
棺桶の天秤棒は私が担ぎますが、もうひとりはどうしても雇わないといけませんね…」
大旦那:
「ああ、それなら私が担いでやろう。死んでる場合じゃない」
※野辺送り…遺体を火葬場まで送ること